
【症例紹介】78歳男性|「入れ歯が壊れた」「下の歯の見た目を良くしたい」というご相談から、上顎チタン床・下顎通常タイプのノンクラスプ義歯でしっかり噛める快適な入れ歯を実現するまで

まつうら歯科・こども歯科です。今回は、長年お使いだった上の入れ歯が壊れてしまい、あわせて下の歯の見た目にもお悩みを抱えていた78歳男性患者様の症例をご紹介します。
「入れ歯を新しくしたいけれど、見た目も気になる」という方は決して少なくありません。今回のケースは、機能面と審美面の両方のご希望を、上下で異なる素材を選びながらどのように叶えていったかがよく分かる症例です(ご年齢を重ねた方向けの当院の取り組みはシニア歯科外来でもご紹介しています)。
こんなお悩みでご来院されました
来院のきっかけは、長年使用していた上顎の入れ歯が破損してしまったことでした。「上の入れ歯が壊れたので、新しく作ってほしい」というご相談で、まずは機能を取り戻すことが目的でした。
お話をうかがっていくと、もうひとつ気になっていることがあるとおっしゃいました。
「下の歯の見た目も、できれば良くしたい」
詳しくお話をうかがうと、下の歯には痛みなどの自覚症状はないものの、すり減って歯が短くなっていることや、見た目そのものが気になっているとのことでした。「入れ歯と一緒に、下の歯も治してほしい」「せっかくなので、全部きれいにしたい」というのが、患者様の率直なご希望でした。
痛みがない状態でも、歯のすり減りは噛み合わせの高さや見た目に影響してくるため、入れ歯だけでなく残っている歯も含めてトータルで整えていく治療計画が必要になるケースです。今回はまさにそうしたご希望に沿って、入れ歯の製作とあわせて、下の歯を含めた口元全体を整える治療をご提案することになりました。さらに、あわせて「しっかり噛みたい」というご要望もあり、審美性と咀嚼機能の両方を満たす治療をご提案することになりました。
ノンクラスプデンチャーとは?チタン床タイプと通常タイプの違い

治療のご説明に入る前に、今回の症例で使用した「ノンクラスプデンチャー」について整理しておきます。
ノンクラスプデンチャーとは、保険の入れ歯にあるような金属のバネ(クラスプ)を使わず、歯ぐきに近い色の樹脂で固定するタイプの入れ歯です。口を開けたときにバネが目立たないため、自然な見た目に仕上がるのが特徴です。ただし、経年劣化で色が少し濁ってきます。
このノンクラスプデンチャーには、床の部分の素材によっていくつかのタイプがあります(詳しくは入れ歯の種類について徹底解説もあわせてご覧ください)。今回の症例では、上下で異なるタイプを選択しました。
- 上顎:ノンクラスプチタン床義歯 床の土台部分に金属のチタンを使用したタイプです。レジン(樹脂)のみのタイプに比べて薄く軽量に作れるうえ、強度が高く、しっかり噛んでも壊れにくいというメリットがあります。チタンは金属アレルギーが起きにくい素材としても知られています。
- 下顎:通常タイプのノンクラスプデンチャー 床全体を樹脂で作る、チタンを使用しない標準的なノンクラスプデンチャーです。チタン床に比べると強度はやや劣りますが、バネが見えない自然な見た目という点は同じで、費用を抑えやすいという特徴もあります。
同じ「ノンクラスプ」という名前がついていても、床の素材によって強度や費用が変わってくる点が、この入れ歯を選ぶ際のポイントです。費用相場やデメリットについては、ノンクラスプデンチャーとは?費用・デメリット・向いている人でも詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
診断とご提案|なぜ上顎はチタン床、下顎は通常タイプを選んだのか


お口の中を拝見し、噛む力やお口の状態を確認したうえで、上下どちらにもノンクラスプ義歯をご提案しました。その中で、上顎についてはチタン床タイプをご提案しました。
興味深かったのは、上下で選択に至った経緯が異なっていた点です。
上の入れ歯については、今回はじめてノンクラスプチタン床義歯をご提案し、素材の特徴や見た目、噛み心地についてご説明したうえで、ご納得いただき選択されました。
一方、下の入れ歯については、実は以前にも通常タイプのノンクラスプデンチャーを使用していたご経験があったとのことでした。
ここで一つ、専門的な観点からお伝えしておきたいことがあります。ノンクラスプデンチャーは、歯が抜けた部分が左右にまたがるような設計になる場合、義歯自体がしなりやすく(撓みやすく)なる傾向があります。そのため本来であれば、強度を上げる目的でチタンやコバルトクロムといった金属を内部に組み込むことをおすすめしています(このあたりの強度と費用の関係は、奥歯の部分入れ歯|2本・3本の費用と種類を歯科医師が解説でも詳しく解説しています)。
しかし今回の患者様は、以前に金属を入れないタイプのノンクラスプデンチャーを使用されていたご経験があり、「それで特に問題はなかった」とのお話でした。ご本人のご希望も踏まえ、下の入れ歯については金属を入れない通常タイプのノンクラスプデンチャーで製作することになりました。
過去に実際に使ってみて満足されていたからこその「もう一度同じものを」というご希望は、治療計画を立てるうえでも大きな安心材料になりました。もちろん、強度の面では金属を入れたほうが安心というのが基本的な考え方ですが、患者様ご自身の過去の使用実感という一次情報を尊重し、上顎には壊れにくさを重視したチタン床、下顎には慣れ親しんだ通常タイプという、それぞれに適した提案ができた症例だったと感じています。
治療の流れ|期間11ヶ月
今回の治療は、初診からお渡しまでおよそ11ヶ月かかりました。
一般的な入れ歯製作と比べると長めの期間になっていますが、これにはいくつかの理由があります。
まず、治療の過程で抜歯が必要な歯があり、抜歯後は歯ぐきが治癒するまでの期間を確保する必要がありました(抜歯後の過ごし方については歯を抜いた後に気をつけるべきこと全解説でも詳しくご紹介しています)。また、複数の歯において根管治療(歯の神経の治療)が必要だったことも、期間が長くなった要因のひとつです。
さらに大きな理由として、噛み合わせの高さを変更したことが挙げられます。歯がすり減って短くなっていたことに対応するため、噛み合わせの高さを調整する治療を行いましたが、高さを変える場合は、いきなり最終的な歯を入れるのではなく、まずプロビジョナルクラウン(仮歯)で実際に噛んでいただき、顎や筋肉、噛み心地に問題が出ないかをしっかり確認する期間が必要になります。この経過観察の期間があったことも、治療全体の期間が延びた理由です。
抜歯後の治癒、根管治療、噛み合わせの高さの確認と、それぞれに必要な期間を丁寧に踏んだことで、最終的に無理のない、安定した噛み合わせに仕上げることができました。
治療期間は、お口の状態や治療内容によって個人差がありますので、今回の症例における一つの目安としてご参考にしてください。
気になる費用について
今回の治療では、入れ歯の製作だけでなく、「下の歯の見た目を良くしたい」というご希望に応えるため、残っている歯にジルコニアクラウン(セラミックの被せ物)による治療もあわせて行いました。ジルコニアクラウンは天然歯に近い透明感があり、変色や劣化がしにくいことから、見た目の改善を希望される方によく選ばれている素材です(素材の種類や特徴はセラミック治療とは?種類・費用・メリットを徹底解説で詳しく解説しています)。
また、最終的なジルコニアクラウンが仕上がるまでの期間は、見た目や噛み合わせに支障が出ないよう、プロビジョナルクラウン(仮歯)を装着してお過ごしいただきました。
今回の治療にかかった費用は、以下の通りです。
| 部位 | 治療内容 | 費用(税込) |
|---|---|---|
| 上顎 | ノンクラスプチタン床義歯 | 517,000円 |
| 下顎 | ノンクラスプデンチャー(通常タイプ) | 187,000円 |
| 上顎 | ジルコニアクラウン(4本・1本99,000円) | 396,000円 |
| 下顎 | ジルコニアクラウン(8本・1本99,000円) | 792,000円 |
| 上顎 | プロビジョナルクラウン/仮歯(4本・1本5,500円) | 22,000円 |
| 下顎 | プロビジョナルクラウン/仮歯(8本・1本5,500円) | 44,000円 |
| 合計 | 1,958,000円 |
いずれも保険適用外の自費診療です。入れ歯そのものの費用に加えて、支えとなる歯や見た目に関わる歯をジルコニアクラウンで整えることで、入れ歯の適合性と口元全体の審美性の両方を高める治療計画になっています。上顎のチタン床は、通常タイプに比べて素材費・技工費が高くなる傾向があり、今回の費用差にもそれが表れています。
費用は使用する材料や設計、治療する歯の本数、お口の状態によって変わってきます。今回の金額はあくまで本症例における実費であり、すべての患者様に当てはまるものではない点にご留意ください。詳しい費用については、カウンセリングの中で個別にご説明しています。
治療後の変化|ゴルフで「しっかり噛める」を実感された瞬間
新しい入れ歯が入ってから、患者様には大きな変化がありました。
治療後、「しっかり噛めるようになった」というお声をいただきました。特に印象的だったのは、趣味のゴルフについてのお話です。噛み締められる分、以前よりしっかり振れるようになったとおっしゃっていました。
入れ歯の安定感は、食事だけでなく、スポーツをはじめとした日常のさまざまな場面での「力の入れやすさ」にも関わってきます。噛みしめる力がスイングの安定につながるというのは、ゴルフを趣味とする方には特に共感いただけるお話ではないでしょうか。
今回の症例は、入れ歯治療が単に「噛めるようになる」だけでなく、趣味や生活の質そのものを支えるものだということを、あらためて実感させてくれるケースでした。
ノンクラスプデンチャーはこんな方におすすめ
- 入れ歯のバネが目立つのが気になる方
- しっかりと噛む力に自信を持ちたい方(特に上顎はチタン床がおすすめ)
- 以前ノンクラスプデンチャーを使用していて、満足感を得られた経験がある方
- 保険の入れ歯で壊れやすさに悩んだ経験がある方
- 趣味やスポーツなど、日常生活でしっかり噛みしめる場面が多い方
一方で、自費診療のため費用がかかる点や、お口の状態によっては適応が難しいケースもあります。またチタン床は通常タイプより費用が高くなる傾向があるため、強度と費用のバランスをどう考えるかも選択のポイントです。実際の診察の中で、ご自身に合ったタイプかどうかを確認することをおすすめします。
他の義歯の症例もご紹介
金属床義歯は、今回のような「見た目の改善」だけでなく、「入れ歯の壊れやすさ」を解決する選択肢としても選ばれています。当院で対応した他の症例もあわせてご紹介します。
83歳女性|何度も割れて浮いてくる総入れ歯を精密義歯で治療
5年間で2回作り直しても、下の入れ歯が食事や会話中に浮いてしまうというお悩みでご来院された患者様です。原因は加齢だけでなく、顎の骨の吸収と型取りの精度にあることが分かり、上顎にチタン床義歯、下顎にチタン補強レジン床を用いたBPS精密義歯をご提案しました。装着後は、以前は避けていた硬い根菜類も噛めるようになったとのお声をいただいています。詳しくは何回も割れて、浮いてくる総入れ歯を精密入れ歯で治療|83歳女性をご覧ください。
66歳女性|2〜3年で5回壊れた入れ歯をチタン床義歯で解決
「見た目よりも、とにかく壊れない入れ歯がほしい」というご希望で来院された患者様です。噛む力が強く、保険診療のレジン床では割れを繰り返していたため、上下チタン床義歯と、奥歯には耐久性の高い金属人工歯を組み合わせてご提案しました。治療から4年が経った現在もトラブルは一度もなく、安定した状態が続いています。詳しくは入れ歯が何度も壊れる女性がチタン床義歯で「焼肉でも食べれる」と言うまでをご覧ください。
これらの症例からも分かるように、金属床義歯は「見た目」「強度」「壊れにくさ」など、患者様お一人おひとりの優先順位に合わせて設計を変えられる点が大きな特徴です。今回ご紹介した78歳男性の症例も含め、同じ金属床義歯でも患者様ごとに選択の理由や設計が異なることが、実際の症例を並べてみるとよく分かります。
よくある質問
Q. ノンクラスプ義歯でもチタン床タイプと通常タイプ、どちらを選べば良いですか?
噛む力が強い方や耐久性を重視したい方にはチタン床タイプやコバルトクロム床タイプがおすすめです。費用を抑えたい方や、以前通常タイプを使って満足されていた方は、通常タイプでも十分にご満足いただけるケースがあります。今回のように、上下で使い分けることも可能です。
Q. ノンクラスプデンチャーはどのくらいもちますか?
使用状況やお口の状態によって差がありますが、定期的なメンテナンスを受けていただくことで長くお使いいただけます。チタン床は通常タイプより耐久性に優れる一方、どちらも永久的なものではないため、定期検診をおすすめしています。
Q. 費用は分割払いできますか?
デンタルローンなど分割払いに対応できる場合があります。詳しくは受付・カウンセリング時にご相談ください。
まとめ
今回の症例では、「入れ歯が壊れた」という機能面のお悩みと、「見た目を良くしたい」という審美面のご希望、その両方を叶えるために、上顎はノンクラスプチタン床義歯、下顎は通常タイプのノンクラスプデンチャーをご提案しました。上の入れ歯は新たな選択として、下の入れ歯は過去の満足のいく経験を踏まえたご希望として、それぞれ異なる背景から、それぞれに合った入れ歯にたどり着いたことも印象的な症例でした。
入れ歯の見た目や噛み心地でお悩みの方は、ぜひ一度まつうら歯科・こども歯科にご相談ください。
入れ歯無料相談のご案内|大阪入れ歯専門外来
「どの入れ歯が自分に合うのかわからない」
「10年、20年ぶりの歯医者で緊張する」
「今の入れ歯が痛い・噛めない・外れる」
そのようなお悩みがある方は、一度状態を確認させてください。
まつうら歯科・こども歯科では、歯科医師30分+歯科技工士30分、計60分の無料相談を行っています。歯科医師と歯科技工士の両方からご説明することで、お口の状態と医学的な視点、そして入れ歯の構造・設計・素材の特徴、両面からより分かりやすくお伝えできます。
無理に治療を進めることはありません。ご相談だけでも大丈夫です。他院で作った入れ歯のご相談も歓迎します。
大阪市住吉区・あびこ駅から徒歩3分。住吉区・東住吉区・阿倍野区・住之江区・堺市・松原市はもちろん、奈良・和歌山・神戸・京都など遠方からもご相談いただいております。
電話:06-6698-6480
またはWEB予約からお申し込みください。
入れ歯の作製・使用にともなう一般的なリスク・副作用
・内容によっては自費(保険適用外)となり、保険診療よりも高額になります。詳細は歯科医師にご確認ください。
・入れ歯を固定するため、患者さまの同意を得てから残存歯を削ったり抜歯したりすることがあります。
・使用直後は、口腔内になじむまで時間がかかることがあります。
・事前に根管治療(神経の処置)や土台(コア)や被せ物(クラウン)の処置が必要となることがあります。
・入れ歯を装着していない時間が長いと、残存歯の傾きや損失、歯槽骨(歯を支える骨)の吸収などが起こることがあります。
・咬合が変化したり、固定源である残存歯が削れたり抜けたりした場合は、入れ歯の調整・修理が必要になることがあります。
・金属を使用する入れ歯では、金属アレルギーを発症することがあります。・使用方法などにより、破損することがあります。
・シリコン義歯は数年に1度シリコンの張り替えが必要になります。
・定期的な検診・メンテナンスが必要です
この記事は、まつうら歯科・こども歯科(大阪市住吉区我孫子)の歯科医師が監修しています。個々の症状や治療の適否については、直接ご来院の上ご相談ください。
本記事は当院での実際の治療症例をもとに構成しています。治療内容・費用・期間は患者様のお口の状態により異なります。詳しくは診療時にご相談ください。本症例は患者様の了解を得て、掲載しております。
write:2026.9.10




