
入れ歯の型取りがつらいと感じる方に向けて、近年広がりつつあるのが口腔内スキャナーによる型取り不要の治療です。型取りで嘔吐反射が出やすい理由やセルフケア、歯科医院で相談できる対応方法については、別記事「入れ歯の型取りで嘔吐反射が辛い方へ」で詳しく解説していますので、まずはそちらもあわせてご覧ください。
この記事では、口腔内スキャナーそのものの仕組みと、なぜ現時点では歯を2本まで失った方のノンクラスプデンチャー(バネのない部分入れ歯)に適用が限られているのか、従来の型取りとの違いや治療の流れを詳しく解説します。
口腔内スキャナーとは

口腔内スキャナー(IOS:Intraoral Scanner)は、ペン型の小型カメラをお口の中に入れ、歯や歯ぐきの形を光学的に読み取る医療機器です。読み取ったデータはその場でコンピュータ上に3Dモデルとして再現され、画面で確認しながら精密な型取りデータを作成できます。
粘土状の印象材をお口に入れて数分間固まるのを待つ従来の方法と違い、スキャナーを軽く滑らせるだけで撮影が完了するため、のどの奥まで器具が触れる時間が短く、嘔吐反射が起きにくいのが最大の特徴です。撮影時間もケースにもよりますが数分程度で済みます。入れ歯の型取りにスキャナーを使うという選択肢は、こうした反射に悩む方にとって現実的な解決策のひとつになりつつあります。
なぜ「2歯欠損までのノンクラスプデンチャー」に限られるのか
口腔内スキャナーは非常に高精度な機器ですが、口の中の粘膜は撮影中も動きますし、唾液や頬・舌の影響を受けやすい部分でもあります。総入れ歯のように広い範囲の歯ぐきの形をすべて記録する必要がある治療や、多数歯欠損で噛み合わせのバランスを大きく調整する必要があるケースでは、まだ従来の印象材による型取りのほうが安定した精度を得やすいとされています。
一方、ノンクラスプデンチャーのように、失った歯が1〜2本程度で残っている歯の情報を中心にスキャンできるケースでは、光学スキャンだけで十分な精度が確保しやすく、型取り不要での製作が現実的な選択肢になります。つまり「対象範囲が限られている」のは技術の限界というより、現時点での精度と安定性のバランスを考えた適用範囲だと理解しておくとよいでしょう。
「目立たない入れ歯」ノンクラスプデンチャーに関してはこちらの記事をご覧ください。
従来の型取りとスキャン方式の違い
| 項目 | 従来の印象材による型取り | 口腔内スキャナー |
|---|---|---|
| 所要時間 | 印象材が固まるまで数分間の静止が必要 | 数分程度でスキャン完了 |
| 不快感 | 嘔吐反射(オエッとなる感覚)が出やすい | 反射が起きにくい |
| データの保存 | 石膏模型として保管、劣化のリスクあり | デジタルデータとして半永久的に保存 |
| 精度の確認 | 完成後でないと形状の誤差に気づきにくい | その場で画面上に3Dモデルを表示し確認できる |
| 適用範囲 | 総入れ歯から部分入れ歯まで幅広く対応 | 現状は少数歯欠損のノンクラスプデンチャーが中心 |
治療の流れ
- カウンセリング・診察:欠損している歯の本数や周囲の歯ぐきの状態を確認し、スキャン方式が適用できるかを判断します。
- 口腔内スキャン:小型カメラでお口の中を撮影し、3Dデータを取得します。
- 設計・データ確認:取得したデータをもとに、歯科医師と歯科技工士が入れ歯の形状を設計します。画面上で仕上がりのイメージを事前に確認できるのもメリットです。
- 製作:設計データをもとに、3Dプリンターや専用の切削機で入れ歯を製作します。
- 試適・調整:完成した入れ歯を実際に装着し、噛み合わせや装着感を確認しながら微調整を行います。
メリットとして感じやすいポイント
- 嘔吐反射がつらく、従来の型取りが苦手だった方でも治療を受けやすい
- 撮影データがデジタルで残るため、将来入れ歯を作り直す際にも活用しやすい
- 画面上でシミュレーションを見ながら治療計画を相談できる
- 通院回数や工程が短縮されるケースが多い
知っておきたい注意点
- 保険診療の対象外となり、自由診療(自費)での取り扱いになります
- 適用できるのは基本的に2歯欠損までのノンクラスプデンチャーに限られます。
- 歯ぐきの状態や骨の形によっては、従来の型取りと併用したほうが精度を確保できる場合があります
- 導入している歯科医院がまだ限られているため、事前に対応可否を確認しておくと安心です
こんな方に向いています
- 過去の型取りで嘔吐反射がつらく、入れ歯治療を避けてきた方
- 見た目が気になり、バネのないノンクラスプデンチャーを検討している方
- 欠損している歯が1〜2本程度で、比較的軽度な部分入れ歯を探している方
- 通院回数をできるだけ抑えたい方
逆に、歯を3本以上失っている方や総入れ歯を検討している方は、現時点ではこの方式の対象外となることが多いため、事前の診察でどの治療法が適しているか確認することが大切です。
よくある質問
Q. 嘔吐反射が強くても口腔内スキャナーなら大丈夫ですか? 反射の強さには個人差があるため、絶対に起きないとは言い切れません。ただし、のどの奥まで器具が触れる時間が短く、圧迫感も少ないため、従来の印象材による型取りより負担が軽く感じられる方が多い傾向にあります。反射が特に強い方は、事前に歯科医師へ相談しておくと、姿勢や撮影の進め方を工夫してもらえることもあります。
Q. 口腔内スキャナーでの型取りは痛みがありますか? カメラを口の中で動かすだけなので、痛みはほとんどありません。金属や器具を強く押し当てる工程もないため、従来の型取りに比べて負担が小さいと感じる方が多いです。
Q. スキャンだけで本当に精度は保てるのですか? 2歯欠損までの限られた範囲であれば、光学スキャンでも臨床上十分な精度が得られるとされています。ただし最終的な適合は、調整で細かく仕上げていく点は従来の方法と変わりません。
Q. 費用はどのくらい違いますか? 自由診療となるため、医院によって価格設定が異なるため、カウンセリング時に見積もりを確認しておくと安心です。
まとめ
口腔内スキャナーによる型取り不要の入れ歯治療は、これまで型取りの不快感がネックで治療をためらっていた方にとって、有力な選択肢になり得る技術です。ただし現時点では2歯欠損までのノンクラスプデンチャーという限られた範囲での適用となるため、自分のケースが対象になるかどうかは、実際の診察で確認することが欠かせません。気になる方は、口腔内スキャナーを導入している歯科医院で、まずは無料相談や診察を受けてみることをおすすめします。
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この記事は、まつうら歯科・こども歯科(大阪市住吉区の歯医者)の歯科医師が監修しています。個々の症状や治療の適否については、直接ご来院の上ご相談ください。
write:2026.8.6




