
入れ歯の厚みが気になる方・入れ歯を薄くしたい方へ 違和感の原因と薄くする方法について解説

「口の中に、板が一枚入っているみたいで」「しゃべるたびに舌がどこかに当たって、言葉がもつれる気がするんです」
入れ歯のご相談で、よくお聞きする言葉です。人前で話すのがおっくうになった、食事の時間が少し憂うつになった、という方もいらっしゃいます。それでも「入れ歯ってこういうものだから」と、何年も我慢してこられた方が少なくありません。
口の中は、髪の毛1本が入っただけでもすぐに気づくほど敏感な場所です。そこに数mmの厚みをもつ入れ歯が入るのですから、違和感があって当然です。我慢が足りないわけではありません。
この記事では、入れ歯が厚く作られる理由、厚く感じる本当の原因の見分け方、今の入れ歯をどこまで薄くできるのか、薄い入れ歯にはどんな選択肢があるのかを順番にお話しします。
まずセルフチェック:その「厚い」はどのタイプ?

入れ歯の厚みの悩みは、原因によって対処法が変わります。当てはまるものを確認してみてください。
- 上あごの裏側全体がもったりと重たく感じる
- 「サ行」「タ行」「ラ行」が言いにくい
- 舌の置き場所がない、窮屈な感じがする
- 口を閉じると、頬や唇が内側から押される
- 噛むと、口いっぱいに何かを頬張っているような感覚がある
- 入れ歯の奥のほうが触れると、オエッとなる
上の3つは「床(しょう)の厚み」が主な原因のことが多く、下の3つは「噛み合わせの高さ」「入れ歯のふちの長さ」など設計の問題が関係していることがあります。後ほど詳しく説明します。
入れ歯が厚く作られる3つの理由
保険の入れ歯は、歯ぐきに乗る土台(床)がレジンと呼ばれるプラスチックでできています。この床は一般的に2〜3mm程度の厚みがあり、部位によってはさらに厚くなることもあります。分厚いのは作り手の手抜きではなく、次のような理由があります。
1. 噛む力で割れないようにするため
食事のとき、入れ歯には想像以上の力がかかります。プラスチックは金属に比べて強度が低いため、薄くするとたわみやすく、ヒビや破折の原因になります。
2. 歯ぐきに吸いつかせ、安定させるため
総入れ歯は、歯ぐきとの間に生まれる吸着力で安定しています。床の面積や形は外れにくさに直結するため、むやみに小さく・薄くはできません。
3. 製作時の変形を防ぐため
プラスチックは固まる過程でわずかに縮みます(重合収縮)。薄すぎると歪みやすく、お口にぴったり合わなくなることがあります。
つまり保険の入れ歯の厚みは、素材の弱さを補うための設計です。薄さを求めるには、この「素材の限界」とどう向き合うかがポイントになります。
実は「厚み」以外が原因のこともあります
ご相談をお受けしていると、入れ歯そのものは極端に厚くないのに、強い違和感を訴えられる方がいます。その場合、次のような原因が隠れていることがあります。
噛み合わせが高すぎる
上下の入れ歯を合わせたときの高さが適正より高いと、口の中に物を頬張っているような感覚になります。唇が閉じにくくなり、「入れ歯が大きい、分厚い」と感じやすくなります。
舌のスペースが狭い
人工の歯の並び方が内側に寄りすぎていたり、下の入れ歯の内側が張り出していたりすると、舌の居場所がなくなります。舌が窮屈だと、床が同じ厚みでも違和感はずっと大きくなります。
入れ歯のふち(床縁)が長すぎる・形が合っていない
頬や唇、舌の動きを邪魔する位置までふちが伸びていると、話したり食べたりするたびに入れ歯の存在を感じます。上あごの奥まで覆いすぎている場合は、嘔吐反射の原因になることもあります。
入れ歯安定剤を厚く使っている
クリームタイプの安定剤を多めに使うと、その分だけ入れ歯が浮き上がり、噛み合わせが高くなります。「安定剤を使い始めてから、なんとなく分厚く感じる」という場合は、使い方か、入れ歯自体が合っていない可能性があります。安定剤の正しい使い方や、使わないほうがよいケースについては入れ歯安定剤は必要?選び方と使ってはいけないケースをご覧ください。
これらは床を薄くするだけでは解決しません。噛み合わせの調整や入れ歯の設計の見直しが必要です。入れ歯が合わなくなる原因については、入れ歯が合わない原因で詳しく解説しています。
厚みによって起こりやすい違和感
床の厚みそのものが原因で起こりやすい症状には、次のようなものがあります。
- 上あごの圧迫感・異物感
- 舌が上あごに触れて出す音(サ行・タ行・ラ行など)の発音のしにくさ
- 食べ物や飲み物の温度・食感がわかりにくい
- 嘔吐反射(オエッとなる感じ)
- 長く話したり食べたりすると疲れる
使い始めの違和感は、数週間から数ヶ月で慣れていく方も多くいます。ただし、しばらく経っても日常生活に支障があるほどつらい場合は、我慢を続けずに調整や作り直しを検討してよい段階です。
今の入れ歯は薄くできる?削れる範囲の目安
「この入れ歯、もう少し薄くできませんか」というご質問は、とても多くいただきます。
結論から言うと、今お使いのプラスチックの入れ歯でも、部分的に少し削って薄くすることは可能です。ただし、プラスチックの場合、強度を保つためにはおおむね1〜1.5mm程度の厚みは残す必要があるとされています。削れる量はわずかで、削りすぎると次のようなリスクがあります。
- 割れやすくなる、ヒビが入る
- たわみが大きくなり、歯ぐきが痛くなる
- 吸着が弱まり、外れやすくなる
もともと厚めに作られている入れ歯なら、削ることで違和感がやわらぐ余地はあります。逆に、すでに薄く設計されている入れ歯では、ほとんど削れないこともあります。
ご自身で削るのは避けてください
市販のやすりなどで入れ歯を削る方がまれにいらっしゃいますが、おすすめしません。削る位置を誤ると、床に穴があいたり、合わなくなって傷ができたりします。一度削ったプラスチックは元に戻せません。気になる部分は、歯科医院で指をさして「ここが気になる」と伝えていただくのがいちばん確実です。
薄い入れ歯の選択肢
調整で改善しきれない場合、入れ歯の作り直しを検討します。選択肢は大きく3つです。
保険の範囲で、設計を見直して作り直す
同じプラスチックでも、噛み合わせの高さ、歯の並べ方、ふちの長さ、床の厚みの配分を見直すことで、違和感が軽くなる場合があります。原因が「設計」にある方は、まずこの方法を検討する価値があります。
なお保険の入れ歯には、原則として前回の作製から6ヶ月以上経過しないと新しく作れないというルールがあります。詳しい条件は受診時にご確認ください。保険の入れ歯を何度作り直しても違和感が解消しない場合の考え方は、自費義歯を検討すべきタイミングとはでまとめています。
金属床義歯(コバルトクロム床・チタン床)
床の部分を金属で作る自費診療の入れ歯です。金属はプラスチックより強度が高いため、床を0.3〜0.5mm程度まで薄く作ることができます(設計や部位によって異なります)。保険の入れ歯と比べると、厚みはおよそ4分の1以下です。
薄くなることで舌を動かせる空間が広がり、発音のしにくさや異物感の軽減が期待できます。また金属は熱を伝えやすいため、飲食物の温度を感じやすいという特徴もあります。感じ方には個人差があり、すべての方に同じ変化があるわけではありません。
チタンとコバルトクロムの性質の違いや、金属のたわみにくさが残っている歯を守る仕組みについては、金属床義歯とは?剛性が残存歯を守る仕組みとチタン・コバルトクロムの違いで詳しく解説しています。当院で扱っている金属床は次の2種類です。
| 比較項目 | 保険の入れ歯(レジン床) | コバルトクロム床 | チタン床 |
|---|---|---|---|
| 床の厚み(目安) | 約2〜3mm | 約0.3〜0.5mm | 約0.3〜0.5mm |
| 重さ | 普通 | やや重め | 軽い |
| 強度 | 普通 | 高い | 高い |
| 温度の伝わりやすさ | 低い | 高い | 高い |
| 金属アレルギー | なし | リスクあり | リスクは低い |
| 修理のしやすさ | しやすい | 難しい場合あり | 難しい場合あり |
| 保険適用 | あり | なし | なし |
| 費用(当院・税込) | 保険適用 | 396,000円 | 451,000円 |
| 完成までの期間(目安) | 総入れ歯:1ヶ月前後/部分入れ歯:2週間〜1ヶ月 | 総入れ歯:2〜3ヶ月/部分入れ歯:1〜2ヶ月 | 総入れ歯:2〜3ヶ月/部分入れ歯:1〜2ヶ月 |
| 通院回数(目安) | 総入れ歯:4〜5回/部分入れ歯:3〜4回 | 総入れ歯:5〜7回/部分入れ歯:4〜6回 | 総入れ歯:5〜7回/部分入れ歯:4〜6回 |
※厚み・期間・通院回数はあくまで目安で、お口の状態や設計、抜歯の有無によって異なります。期間の詳しい内訳は入れ歯ができるまでの期間はどのくらい?をご覧ください。
金属床の薄さを、作る前に試着で体験できます。以下の記事をご覧ください。
[記事]保険の入れ歯と厚みを比べる「試着用入れ歯」|金属床入れ歯の薄さ、作る前に試せます

金属床のデメリットも知っておいてください
薄さの面では優れていますが、次のような点も理解したうえで選んでいただきたいと考えています。
- 自費診療のため、費用が高額になる
- 金属部分は、プラスチックのように簡単に削ったり足したりできない
- 歯ぐきがやせた場合の裏打ち(リライン)や修理に制限がある
- 金属の種類によっては、金属アレルギーのリスクがある
- 薄くなっても、「異物感がまったくなくなる」わけではない
とくに、まだ抜歯後まもない方や、歯ぐきの形が変わりやすい時期の方は、先に保険の入れ歯で様子を見てから金属床を検討したほうがよい場合もあります。
金属を口の中に入れることに抵抗がある方や、金属アレルギーが心配な方は、金属を使わない自費の入れ歯も選択肢になります。
上あごを覆わない設計という選択肢
「上あごを覆われること自体がつらい」という方には、厚みを減らすのではなく、覆う面積そのものを減らす方法もあります。
歯が何本か残っている部分入れ歯であれば、残っている歯に支えを求めることで、上あごを大きく覆わない設計にできることがあります。総入れ歯の場合は、インプラントを数本入れて入れ歯を固定する方法(インプラントオーバーデンチャー)で、上あごの部分を小さくできる場合があります。
ただし外科処置が必要になるため、全身の状態や骨の量を含めて慎重に検討します。費用や、とくに下あごで選ばれる理由についてはインプラントオーバーデンチャーとは?で解説しています。
相談するときに伝えてほしいこと
入れ歯の厚みの悩みは、人によって「どこが」「いつ」気になるかが違います。受診の際は、次のようなことを教えていただけると、原因を絞り込みやすくなります。
- 特に気になる場所(上あごの真ん中、奥のほう、下の内側など)
- 気になる場面(話すとき、食べるとき、つけているだけで、など)
- 言いにくい音があるか
- 安定剤を使っているか、どのくらいの量か
- 今の入れ歯を使い始めた時期
うまく言葉にできなくても大丈夫です。私たちは「入れ歯に慣れられないのは我慢が足りないから」とは考えていません。一緒に原因を探していきます。
よくある質問
Q. 入れ歯を薄くしたら壊れやすくなりますか?
プラスチックの入れ歯は、薄くするほど割れやすくなります。薄さと強度を両立させたい場合は、金属床義歯が選択肢になります。
Q. 金属床にすると、どのくらい薄くなりますか?
保険の入れ歯の床が約2〜3mmなのに対し、金属床では約0.3〜0.5mmが目安です。お口の状態や設計によって異なり、感じ方にも個人差があります。
Q. 厚くて話しにくいのは、慣れで解決しますか?
数週間から数ヶ月で慣れる方も多くいますが、慣れにくい方もいます。音読などの練習をしても改善しない場合は、噛み合わせや設計に原因がないか確認することをおすすめします。
Q. 上あごが気持ち悪くて、オエッとなります。
上あごの奥まで床が伸びていることが原因の場合があります。覆う範囲の見直しや、薄い金属床、上あごを覆わない設計を検討できることがあります。
Q. 部分入れ歯でも厚みは気になりますか?
はい、気になる方はいらっしゃいます。部分入れ歯でも金属床にすることで薄くできるほか、残っている歯の状態によっては覆う範囲を小さくできる場合があります。
Q. 他院で作った入れ歯の相談もできますか?
はい、可能です。現在お使いの入れ歯をお持ちください。厚みや設計を確認したうえで、調整で対応できるか、作り直しが必要かをご説明します。
まとめ
保険の入れ歯が厚いのは、プラスチックという素材で強度と安定性を保つための設計です。ただ、「厚く感じる」原因は床の厚みだけとは限らず、噛み合わせの高さや舌のスペース、ふちの長さが関係していることもあります。
今の入れ歯でも少し削れることはありますが、限界があります。設計の見直しで改善する場合もあれば、金属床や上あごを覆わない設計が合う場合もあります。どれが適しているかはお口の状態によって違うため、まずは今の入れ歯を見せていただくところから始めましょう。
当院の入れ歯の種類や費用は、入れ歯治療ページでまとめてご確認いただけます。
入れ歯無料相談のご案内 大阪義歯専門外来
入れ歯のトラブルは型取り、噛み合わせ、設計、お口の状態など、さまざまな要因が関係しています。
大阪市住吉区のまつうら歯科・こども歯科の入れ歯専門外来では、現在お使いの入れ歯の状態を確認しながら
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入れ歯の作製・使用にともなう一般的なリスク・副作用
・内容によっては自費(保険適用外)となり、保険診療よりも高額になります。詳細は歯科医師にご確認ください。
・入れ歯を固定するため、患者さまの同意を得てから残存歯を削ったり抜歯したりすることがあります。
・使用直後は、口腔内になじむまで時間がかかることがあります。
・事前に根管治療(神経の処置)や土台(コア)や被せ物(クラウン)の処置が必要となることがあります。
・入れ歯を装着していない時間が長いと、残存歯の傾きや損失、歯槽骨(歯を支える骨)の吸収などが起こることがあります。
・咬合が変化したり、固定源である残存歯が削れたり抜けたりした場合は、入れ歯の調整・修理が必要になることがあります。
・金属を使用する入れ歯では、金属アレルギーを発症することがあります。・使用方法などにより、破損することがあります。
・定期的な検診・メンテナンスが必要です
この記事は、まつうら歯科・こども歯科(大阪市住吉区我孫子)の歯科医師が監修しています。個々の症状や治療の適否については、直接ご来院の上ご相談ください。
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